"ナロー911"時代、フェルディナンド・ピエピによって究極のストリップダウンが施されたボディと同時代のポルシェレーシングプロトタイプの強力なエンジンを組み合わせた、現在まで続く911シリーズの系譜の中でも、とりわけ神秘的な存在。ボディはいわゆる"73のカレラ"と共通で、ストレートに組むと、作例のようにリヤのファットなフェンダーに違和感が生じる。あくまで実車にこだわりたい方は、911クーペ'69のボディとフロントホイール・タイヤが別途用意する必要がある。また、リヤのトレーリングアームサスペンションの位置決めが曖昧で、ホイールベース、トレッド、前後車高調整に少し手間と技術を要することも全くエンスージアストキット時代と一緒だ。実車のディテール再現に必要なパーツは、全体的に構成も含めてうまく実車を追えているが、そのフィッティングとディテールアップにはかなりの手間と技術が必要。裏を返せば、カーモデラーとしてこれほど腕の振るい甲斐のあるキットもそうそう存在しないので、腕に覚えのある猛者の方にはぜひ一度は手掛けて頂きたい逸品。